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ランチにビール

愛顧、お願いします

『ホークライン家の怪物』リチャード・ブローティガン:サスペンス?ホラー?奇妙な館へようこそ!

★★★★☆ アメリカ 70年代

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サスペンス?ホラー?奇妙な館へようこそ!

大好きな作家、リチャード・ブローティガンの長編6作目、『ホークライン家の怪物』(1974年)です。

現在絶版中で、ぼくは数年前に下北沢の古本屋で手に入れました。R・ブローティガンという作家は、日本でも根強いファンが多いことで有名ですが、長編はこの6作目以降、どれも絶賛絶版をかこっています。

ブローティガンといえば『アメリカの鱒釣り』(1967)、言わずと知れたアメリカ文学史に残る名作を書いた男ですが、この『ホークライン家の怪物』以降はどうも「パッとしない」と思われがちです。

なんでも、様々なジャンルに挑戦していた時期らしく、悪い意味で「普通の小説」ばかりだったと言われることが多いそうで。

しかし、声を大にして言わせてもらいたい。

中期のブローティガンは最高なんだ!!

 

 普通じゃない「普通の小説」

中期、というのは『ホークライン家の怪物』『バビロンを夢見て―私立探偵小説1942年』(1977)ってことにします。期間で言うと、ほんの4年ぐらいですね。

商業的にはズッコケたみたいで、続く東京モンタナ急行』(1980)まで期間が空いているところからも、作者の苦労がひしひしとうかがえます。

なんでみんな、ホークラインの良さが分からない!?アホか!?

 

主人公は殺し屋の二人組・グリアキャメロンマジック・チャイルドと名乗るインディアン娘に連れられて怪物退治へ向かう、という素っ頓狂な話。

グリアとキャメロンにとって、サンフランシスコからハワイまでの旅は、なんとまあ怖ろしいものだった。アイダホ州で保安官補を撃ったときよりももっとおっかないくらいだった。その保安官補ときたら、十回も撃ったのに全然死ななかった。最後にはとうとう、グリアが頼むはめになったのだ。

「もう撃つのはいやだから、どうか死んでくれ」すると、保安官補のいうことには、「オーケーだ。もう死ぬからさ、撃つのはやめてくれ」

「もう撃たないよ」とキャメロンがいった。

「結構。じゃ、死ぬよ」言葉どおり、かれは死んだ。(第一編ハワイ-乗馬の稽古)

しょっぱなからこんな調子である。ブローティガン恐るべし。こういうシュールな笑いを描かせたら、右に出るものはいない作家ですわ。

村上春樹高橋源一郎の原点は、間違いなくここにあるでしょう。バカげているぐらい飛躍した比喩。「話を盛る」というのは古来から使われてきたレトリックですが、ブローティガンに持たせると、まるで棍棒エクスカリバーになったかのよう。

『アメリカの鱒釣り』『芝生の復讐』(1971)はかなり「詩」に近い作品だったので、『ホークライン家の怪物』以降の作品が「普通の小説」だといわれるのも無理はありません、が、それは相対的評価にすぎない。

 

 

 

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 はやく復刊してくれ!!

日本における海外文学市場というのは風前の灯火。もう売れない、売れない。エジプトで砂を売ったほうがマシなんじゃないか、ってぐらい売れてない。

こんな素晴らしい小説、物語が、いまや読みたくても読めないんです。これはひどいことだ。僕の大好きな中期ブローティガン作品はやたら短いのもあって、そのあたりもネックになりそう。本文も改行だらけでスカスカだし、文庫化したとしてもペラペラになりそう。

逆に言えば、そういうところが読みやすくて現代的だと思うんだが……。

ブローティガンへの愛については、また語る機会があるでしょう。

 

 

評価:4/5点 ★★★★☆

綺麗にまとまったエンターテイメント中編。佳作。

初心者オススメ度:4/5 ★★★★☆

安心のリーダビリティ。ブローティガン入門にもオススメ。